『そして、サンタ・マリアがいた―キリシタン復活物語』
―未来にひらかれた意義―
古巣 馨
「ワレラノムネ アナタノムネト オナジ」1865年3月17日、長崎は大浦天主堂で浦上キリシタンがプティジャン神父に告げた信仰告白です。7世代250年間、オナジ信仰を手渡し、時の合図に応えて深い沈黙から名乗りを上げた人たち。あれから150年、どんな過酷な状況下でも、曲がることも折れることもなく凛として、オナジを伝えて来た日本の教会はいま苦悩しています。価値観の多様化と相対主義が席巻する現代社会の中で、受け渡されたオナジ福音、オナジ信仰を手渡すことが出来なくなってきているからです。伝えるものを失くした社会や家庭や教会は、どんなにものは豊かでも精神的な貧困は深刻さを増していきます。
過去の出来事は事実として変わることはありません。しかし、その出来事の意義は、いつも未来にひらかれています。「信徒発見」という出来事は、現代の私たちにとって今どのような意義をもっているのでしょうか。
世界史に類を見ない過酷な禁制と弾圧下、潜伏キリシタンはなぜオナジ信仰を手渡し、沈黙から復活することができたのか。その答えを知ることは、明日への道標を確認することでもあります。
日本のキリスト教の始まりに、歴史の節目ふしめに、そして今も苦しみの中から新たな息吹が生まれるところに、いつもサンタ・マリアがそっと見守っていることも、この劇のもう一つの伏線となっています。
このDVDを鑑賞される皆様が、日本の歴史の中で起こされた神の不思議なみわざを想い起し、明日への希望を見いだすことが出来たらと願っています。
古巣 馨(ふるす・かおる)
1954年、長崎県五島市生まれ。カトリック長崎大司教区司祭。長崎純心大学教授。