映画監督 千 葉 茂 樹(日本映画大学・特任教授、前シグニスジャパン会長)
前から知りたいと思っていたことが今回叶えられた。感謝!ヨハネ二十三世こそ、第二バチカン公会議を召集した教皇なのだ。DV D「ヨハネ二十三世 平和の教皇」がその謎に答えてくれる。
映画の構成は、ベニス総大司教のロンカッリ枢機卿が教皇の選出のためバチカンに向かう場面から始まり、回想で農家の少年が神父となり励む司祭時代。当時ヨーロッパ社会は、農業社会から工業と産業の盛んな世界に急変し、労働運動と教会の変化に対峙する。
新たな貧困層への理解=ドラマとして若い母と赤ん坊のエピソードが司祭の目を開かせる。また、1925年ブルガリアに赴任したバチカンの特使となった彼は、地震災害地でギリシャ正教の主教を救出し「一致の道こそ大切でしょう」と協力を誓い合う〜感動的なエピソードに胸打たれる。
やがて、凶暴化したナチス・ドイツがユダヤ人たちを絶滅収容所へ向かわせるところを巡礼の列車として救出に成功するなど〜これらのエピソードが、バチカンの教皇選出で大きく評価されていく。コンクラーベ11回の結果、教皇ヨハネ二十三世となった彼は第二バチカン公会議の開催を敢行したのである。
教皇ヨハネ二十三世が遭遇した東西冷戦のキューバ危機(1962年)に、アメリカのケネディ大統領とロシアのフルシチョフ首相あてに平和を訴えて遂に世界平和を実現する。フルシチョフは教皇と同じく貧しい農家の出身だった。
この教皇ヨハネ二十三世の命がけの業績を知ったとき、私は第二バチカン公会議開催の意義に神の啓示をみることができたのだ。現代人は改めて教皇ヨハネ二十三世の存在を知る機会をもつべきである。